スタッフが30人を超えたら。美容室が見直したい労務管理7つのポイント
「スタッフも店舗も増えた。でも、給与計算も相談対応も、結局オーナーが全部やっている。」
サロンが成長すると、少人数の頃には回っていたやり方が、少しずつ追いつかなくなります。給与の小さなミス、店長によって違う指導、口頭で決めた歩合条件。放置すると、働く人の不信感にもつながります。
30人は、オーナーの頑張りだけで回す運営から、仕組みで支える運営へ切り替える目安。今回は、スタッフが30人を超える美容室で見直したい7つのポイントを整理します。
※30人という人数は、この記事での運営上の目安です。法的義務の人数基準は、制度や事業場の単位によって異なります。
目次
① 不満が連鎖退職に変わる前に、相談できる仕組みをつくる
② 勤怠・給与は、手計算中心の運用を見直す
③ 店長・幹部に、技術以外の教育をする
④ 雇用契約書まで含めて、人事情報をDX化する
⑤ 就業規則と店舗ごとの運用をそろえる
⑥ 評価・昇給・歩合の基準を説明できるようにする
⑦ 「その人が休むと止まる」を減らす
まずは、この3つから始めよう
30人を超えるサロンの仕組みづくりは、SHARO tokyoへ
① 不満が連鎖退職に変わる前に、相談できる仕組みをつくる
影響力のあるスタッフが「この店では大切にされていない」と感じたとき、その不信感が周囲に広がり、退職が続く可能性があります。
例えば、歩合の計算を聞いても説明されない。店長に相談しても取り合ってもらえない。休みの取り方が人によって違う。こうした経験が積み重なると、誰かの退職をきっかけに「自分も辞めようかな」と考える人が出てきます。
声を上げた人を問題人物と決めつける前に、不満の背景と事実を確認する。経営側にとって耳の痛い話ほど、改善のヒントが含まれていることがあります。
• 定期的な個別面談で、仕事量・人間関係・給与への疑問を聞く
• 店長に相談しづらい場合の、別の窓口を用意する
• 相談を受けた人、対応期限、本人への回答方法を決める
• 相談者の情報は必要な人に限って共有する
ハラスメントの相談や事実確認への協力を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。窓口を置くことに加え、安心して利用できる運用が必要です。根拠:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
② 勤怠・給与は、手計算中心の運用を見直す
30人分の出退勤、休憩、残業、有休、歩合、店販手当を毎月手作業で集計すると、確認だけでも大きな負担になります。入退社や店舗間の応援が重なれば、転記ミスのリスクも増えます。
勤怠ソフトと給与ソフトを連携し、転記を減らすことをおすすめします。スタッフが打刻し、店長が確認し、給与担当者が確定する。誰がいつ確認するかまで決めて導入しましょう。
• 開店準備・閉店作業などを含め、実際の始業・終業を記録する
• 打刻漏れの修正と承認の履歴を残す
• 歩合・店販・店舗間勤務の計算ルールを設定する
• 最初は実際の1か月分で、従来の計算と照合する
ソフトを入れても、設定が間違っていれば計算結果も間違います。導入と同時に、労働時間の扱いと給与ルールを整理することが大切です。
厚生労働省のガイドラインは、始業・終業時刻の確認・記録を求め、原則として現認またはタイムカード等の客観的な記録に基づく方法を示しています。クラウドソフトの導入自体が法律上の義務という意味ではありません。根拠:労働時間適正把握ガイドライン
③ 店長・幹部に、技術以外の教育をする
売上が高い人、技術が上手な人が、そのままスタッフの育成や相談対応も得意とは限りません。店長の言い方や判断が、店舗の雰囲気を大きく左右します。
研修は、サロンで起こる場面で考える
• ハラスメント研修:ミスへの注意、営業中の叱責、容姿に関する発言、相談を受けたときの対応
• SNSリテラシー研修:お客様の写真の掲載許可、個人情報、他者への中傷、店舗アカウントの管理
• 店長、副店長研修:休憩・残業・有休の扱い、打刻修正、閉店後の練習時間の判断
• 面談・育成研修:期待する行動の伝え方、評価の説明、悩みの聞き方
資料を配って終わりではなく、「この場面ならどう対応するか」を話し合い、判断に迷ったら本部へ相談できるようにします。
ハラスメント対策は、研修だけで完了しません。方針の周知、相談体制、事実確認、再発防止まで整える必要があります。なお、2026年10月1日からはカスタマーハラスメント等の防止措置も事業主の義務になっています。お客様対応でスタッフを守る方針も確認しましょう。根拠:厚生労働省のハラスメント対策案内
④ 雇用契約書まで含めて、人事情報をDX化する
契約書は紙、給与条件はチャット、住所変更は店長への口頭連絡。情報が散らばっていると、「どれが最新なのか」が分からなくなります。
スタッフごとに、必要な情報と書類を確認できる状態にする。これが人事労務のDXの出発点です。
• 雇用契約書・労働条件通知書と、変更時の履歴
• 所属店舗、給与・歩合条件、適用開始日
• 有期契約の更新期限、提出書類の未回収状況
• 入社・異動・休職・退職の手続きと担当者
更新期限の通知や入社時のチェックリストを使えば、記憶に頼る管理を減らせます。給与・個人情報は閲覧権限を絞り、退職時にはシステムへのアクセスも整理しましょう。
労働条件のうち法令で定める事項は、書面等で明示する必要があります。電子メール等による明示は、労働者が希望し、書面として出力できる方法であることが条件です。電子化しただけで適法な明示になるとは限りません。根拠:厚生労働省「採用時の労働条件明示」
⑤ 就業規則と店舗ごとの運用をそろえる
「A店は休みが取りやすいのに、B店は店長が認めない」。同じ会社で説明や手続きが違うと、不公平感が生まれやすくなります。
休暇申請、残業の確認、遅刻・欠勤、練習の扱い、相談対応について、本部の共通ルールと店長が判断できる範囲を決めましょう。店舗の事情で違いが必要なら、その理由も説明できる状態にします。
人数の数え方は、制度ごとに確認
就業規則の作成・届出は、原則として常時10人以上の労働者を使用する事業場で必要です。会社全体で30人だから、すべての店舗に同じ届出義務が生じる、という数え方ではありません。事業場の判断は実態も踏まえて確認します。根拠:厚生労働省「就業規則について」(労基法89条)
また、法定時間外・法定休日労働をさせる場合は、事前の36協定の締結・届出等が必要です。人数が少なくても確認が必要な事項です。根拠:厚生労働省「労働時間・休日」(労基法36条)
健康管理の体制も見直しましょう。美容室などで常時10人以上50人未満の事業場では衛生推進者、常時50人以上の事業場では衛生管理者・産業医など、規模に応じた体制が必要です。これも会社全体の合計人数と混同しないようにします。根拠:東京労働局「労働安全衛生法に関する手続」
⑥ 評価・昇給・歩合の基準を説明できるようにする
人数が増えるほど、「オーナーに気に入られているから」という見え方は避けたいところです。売上だけでなく、育成、協力、接客、役割に応じた評価項目を整理しましょう。
何を頑張れば、次の役割や待遇につながるのか。スタッフに説明できる基準が必要です。
• 歩合率と計算対象、店販手当の条件を明文化する
• アシスタント・スタイリスト・店長の役割を分けて示す
• 評価時期と面談の方法を決める
• 店舗間で評価の厳しさが違わないか、幹部で確認する
条件を変えるときは、一方的な不利益変更にならないか、契約や規程との整合性も確認します。基準をつくることと、納得して働けるように説明することはセットです。
⑦ 「その人が休むと止まる」を減らす
給与担当者しか締め方を知らない。店長しか店舗アカウントを管理できない。オーナーが不在だと何も決められない。こうした状態は、退職だけでなく、病気や休暇でも運営に影響します。
担当者・確認者・代わりに対応する人を決め、手順を残す。勤怠の締め、給与確定、契約更新、入退社の手続きを一覧にしましょう。
毎月の幹部会議では、売上に加えて、残業、休暇取得、給与修正、未回収書類、退職理由の傾向も確認します。個人の相談内容をむやみに広げず、組織として改善できる課題を共有することが大切です。
まずは、この3つから始めよう
• 現状を見える化:勤怠・給与・契約書・相談対応が、誰に依存しているかを確認する
• 土台を整える:ルールを整理し、勤怠・給与ソフトと人事情報の管理方法を決める
• 現場に根づかせる:店長・幹部を教育し、運用状況を定期的に振り返る
スタッフが増えることは、サロンにとって大きな成長です。その成長を安定させるために、働く人が安心でき、経営者も抱え込まない仕組みを整えていきましょう。
30人を超えるサロンの仕組みづくりは、SHARO tokyoへ
SHARO tokyoは、美容室・エステなどの労務相談、給与計算、就業規則の整備に加え、HRシステムの導入・業務設計、企業研修・管理職研修を支援しています。
「人数が増えて、今の管理方法では限界を感じる」「ソフトを入れたいけれど、何から整えればよいか分からない」。そんなときは、サロンの現状から一緒に整理します。
次の店舗、次の人数へ進む前に、労務管理の土台をつくりませんか。
※法令・制度に関する記述は2026年10月3日時点の公表資料を確認しています。具体的な適用は、雇用形態・店舗の実態等によって確認が必要です。