「閉店後の練習って、労働時間?」サロン経営者が整理したい5つのこと
「閉店後の練習にも、給料を払わないといけないの?」
スタッフの成長を応援したい。でも、どこまでが仕事で、どこからが本人の自主練なのか。サロン経営者にとって、迷いやすいテーマです。
まず結論からいうと、閉店後の練習が、一律に労働時間になるわけではありません。業務上義務づけられていない、自由意思に基づく練習であれば、労働時間に該当しない可能性があります。ただし、判断するのは「自主練」という名前ではなく、実際の運用です。
目次
判断基準は「指揮命令下」にあるか
自由意思の練習は、労働時間に当たらない場合がある
「自主練」でも、労働時間になるケース
サロンで確認したい5つのこと
労働時間に当たるなら、勤怠と賃金に反映する
練習をなくすのではなく、育成のルールを整える
サロンの練習制度・労務管理のご相談はSHARO tokyoへ
判断基準は「指揮命令下」にあるか
厚生労働省のガイドラインは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としています。明確な指示だけでなく、黙示の指示による業務も含まれます。
つまり、「本人のためになる練習だから無給」「就業規則に自主練と書いてあるから勤務外」だけでは決まりません。参加を断れるのか、途中で帰れるのか、店から何を求められているのか。こうした実態から判断します。
根拠:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」3(1〜2ページ)
自由意思の練習は、労働時間に当たらない場合がある
ここは、サロン経営者に知っておいてほしいポイントです。
厚労省の研修・教育訓練に関する資料には、美容室を例にした「労働時間に該当しない」ケースが掲載されています。
その内容を要約すると、会社が始業前や終業後に練習場所や道具を提供していても、練習をするかどうかや内容はスタッフに委ねられ、会社が実施状況や内容を特に確認しない、というものです。
たとえば、仕事と必要な片づけが終わったあと、本人が「今日はウィッグでカットを練習したい」と残る。練習せずに帰っても不利益はなく、練習内容や終了時刻も本人が決める。こうした運用は、上記の例に近いと考えられます。
店の道具を使うことや、仕事に役立つ技術を磨くことだけで、すべての練習が労働時間になるわけではありません。
根拠:厚生労働省「『研修・教育訓練』に関する労働時間の考え方」(美容室の事例・1ページ)
「自主練」でも、労働時間になるケース
一方で、厚労省は、業務上参加が義務づけられた研修や、参加しないと不利益があり実質的に強制されている研修を、労働時間に該当するとしています。
サロンでも、次のような運用は注意が必要です。以下は判断のための例です。
店長が「閉店後は全員1時間練習」と指示している
参加しないスタッフを叱責したり、練習への不参加を理由に不利益を与えたりする
店が日時・内容・参加者を指定し、参加や課題の提出を事実上必須にしている
業務に必要な技術の習得について、勤務外の練習を義務づけている
退勤打刻をさせてから練習しても、指揮命令下にある実態が変わらなければ、労働時間から外すことはできません。
なお、技術試験やスキル評価があることだけで、すべての自主練が直ちに労働時間になるとは限りません。勤務外の練習そのものが義務なのか、不参加による不利益があるのかを確認する必要があります。
根拠:厚生労働省「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」(1ページ)/上記ガイドライン3・4(9)
サロンで確認したい5つのこと
① 練習しないで帰れるか
「自由参加」と伝えるだけでなく、実際に帰れる雰囲気があるか確認しましょう。参加を断った人への叱責や不利益があれば、自由意思とは言いにくくなります。
② 時間と内容を誰が決めているか
本人が希望して練習するのか、店が勤務外の課題や時間を指定しているのか。指示の内容を具体的に整理すると、判断しやすくなります。
③ 通常業務は本当に終わっているか
清掃や翌日の準備など、店が指示する仕事を「練習時間」に混ぜないことが大切です。まず仕事の終了と、自由に帰れる状態を明確にしましょう。
④ 教える先輩の時間はどう扱うか
練習する本人が自由参加でも、先輩が店から指導を命じられているなら、先輩の指導時間は別に判断します。「後輩が自主練だから、教える側も勤務外」と一括りにしないようにしましょう。
⑤ 書面と現場の運用が一致しているか
任意の練習と、店が求める研修を区別し、参加・退席の自由などをスタッフに伝えます。ただし、「自主練に同意します」という書面だけで、実質的に強制されている時間を勤務外にすることはできません。
③などの運用整理は、厚労省資料の「労働時間に該当しない研修等」の留意点(2ページ)も参考になります。
労働時間に当たるなら、勤怠と賃金に反映する
労働時間に当たる練習は、実際の時間を把握して勤怠に反映し、賃金を支払う必要があります。法定時間外・法定休日・深夜の労働に該当する場合は、割増賃金の確認も必要です。
法定時間外や法定休日に働かせる場合には、36協定などの対応も確認します。なお、閉店後というだけで、必ず法定時間外になるわけではありません。勤務制度や、その日の労働時間などによって異なります。
根拠:上記ガイドライン4/労働基準法第24条・第32条・第36条・第37条
練習をなくすのではなく、育成のルールを整える
技術を磨く時間は、サロンにとってもスタッフにとっても大切です。だからこそ、店が必要とする研修と、本人が選ぶ自主練を整理しましょう。
店が義務づける練習は、労働時間として扱う
自主練は、参加するかどうかを本人が自由に選べる運用にする
名称や同意書だけで判断せず、日々の実態を確認する
「自由意思の練習なら問題ない可能性が高い」という考え方は、労働時間に該当しない場合がある、という意味で捉えるのが適切です。具体的な指示や不利益の有無まで確認することが、育成を安心して続ける土台になります。
サロンの練習制度・労務管理のご相談はSHARO tokyoへ
SHARO tokyoは、美容業界の労務相談、就業規則、給与計算などを支援する社労士事務所です。
「うちの練習は勤務時間に含めるべき?」「自由参加と必須研修をどう分ける?」というお悩みも、実際の運用を整理するところから始めてみませんか。練習制度と勤怠管理を一緒に見直すことで、スタッフの成長を応援しやすい環境づくりにつながります。
支援内容・お問い合わせ:SHARO tokyo公式サイト
※本記事は、2026年10月時点で確認した法令・厚生労働省資料に基づく一般的な解説です。個別の判断は、指示や参加義務などの具体的な実態によって異なります。