「美容師の歩合給は、何%くらいにすればいいんだろう?」
美容室の給与制度では、基本給を土台に、売上に応じた歩合給を上乗せする仕組みがよく使われます。売上だけで給与が決まる完全歩合ではなく、毎月の収入の安定と成果への還元を両立させる考え方です。
ただし、歩合率は一律ではありません。売上に応じて段階的に率を上げたり、会社によっては最高歩合率を20〜30%に設定したりする設計もあります。
この記事では、特定の会社の事例は紹介せず、基本給+歩合給、売上に応じた率の変更、最低保証給というパターンを整理します。全国平均や推奨率を示すものではありません。
目次
1.基本給+技術歩合というパターン
2.売上に応じて、歩合率を段階的に上げるパターン
3.売上が低い月の不安には、最低保証給を設ける方法も
4.店販歩合も、率と利益の両方を確認する
5.業務委託の報酬は、雇用の給与と分けて見る
6.歩合給でも、最低賃金と残業代の確認は必要
7.歩合率を決める前のチェックリスト
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1.基本給+技術歩合というパターン
基本給を支払い、その上に売上に応じた歩合給を加算する方式です。雇用するスタイリストの給与制度では、基本給+歩合給を中心に考えると、収入の安定と成果への還元を整理しやすくなります。
例えば、基本給25万円に、対象となる技術売上の10%を加算する仮の設定なら、対象売上100万円の月は25万円+10万円=35万円です。ほかの手当や残業代は別途確認します。
歩合の対象を指名売上だけにするのか、フリー売上も含めるのか、売上全額に掛けるのか、一定額を超えた部分だけに掛けるのかで支給額は変わります。率だけでなく、対象売上と計算式まで決めましょう。
技術歩合も店販歩合も、対象売上を「税込」にするのか「税抜」にするのかを、あらかじめ明示しておきましょう。歩合率だけを決めていると、サロン側とスタッフ側で支給額の認識がずれる原因になります。
例えば、消費税率10%の商品・サービスで、税抜売上100万円(税込110万円)に技術歩合20%を掛けるなら、税抜基準では20万円、税込基準では22万円。1人・1か月で2万円の差になります。店販でも、税抜売上5万円(税込5万5,000円)に10%を掛けると、5,000円と5,500円で差が出ます。
税込基準では消費税相当額も歩合の計算対象になるため、人数や売上、歩合率が大きいほど負担が積み重なります。人件費を設計する際は、税抜売上を基準に試算し、採用時から求人票・雇用契約書・賃金規程・給与計算の設定をそろえることが大切です。売上区分によって率を変える場合も、区分の判定と歩合額の計算に使う税込・税抜のルールを明記しましょう。
税率の参考:国税庁「消費税および地方消費税の税率」
2.売上に応じて、歩合率を段階的に上げるパターン
歩合率をずっと同じにするのではなく、売上が増えるほど率を上げる設計もあります。「次の売上目標を達成すると、歩合率も上がる」と分かることで、目標を持ちやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。
例えば、基本給に上乗せする技術歩合の手当率を、次のように設定する方法です。
税抜売上50万円未満:7%
税抜売上50万円以上70万円未満:8%
税抜売上70万円以上100万円未満:9%
税抜売上100万円以上150万円未満:10%
税抜売上150万円以上:15%
これは制度設計の一例です。会社によっては、さらに上の売上区分を設け、最高歩合率を20〜30%にすることもあります。ただし、その率を業界共通の相場や、すべてのサロンへのおすすめと考える必要はありません。
売上区分の率を対象売上全額に掛ける設定なら、税抜売上80万円は80万円×9%=7万2,000円、120万円は120万円×10%=12万円の歩合給です。どちらも基本給に上乗せします。
売上全額にその率を掛けるのか、区分ごとの部分に掛けるのかは、別のルールです。全額方式では区分をまたぐと支給額が大きく変わる場合もあります。スタッフへの説明と人件費の試算をセットで行いましょう。
3.売上が低い月の不安には、最低保証給を設ける方法も
歩合給は成果が反映される一方で、「売上が低い月は収入も下がるのでは」と不安に感じるスタッフもいます。そこで、月の給与が一定額を下回らないよう、最低保証給を設定する方法もあります。
例えば、基本給+歩合給の合計が最低保証額を下回るときに、その差額を補う設計です。仮に基本給22万円、当月の歩合給2万円、最低保証給25万円なら、合計24万円に1万円を補い、25万円を支給します。保証額を超える月には、基本給+歩合給で計算した額を支給します。
この設定は、最低保証給に歩合給をもう一度足すという意味ではありません。何を含む給与額に対する保証か、適用条件や期間、ほかの手当・残業代の扱いも明確にしましょう。
基本給で日々の安心感を支え、歩合給で成果を還元し、必要に応じて最低保証で収入の不安を和らげる。採用だけでなく、スタッフが長く働ける制度として考えることが大切です。なお、制度上の保証額とは別に、最低賃金や割増賃金の確認が必要です。
4.店販歩合も、率と利益の両方を確認する
シャンプーやトリートメントなどの商品販売に対する歩合です。ここでは10%と15%という仮の数字で計算してみます。適切な率は、商品の利益率や販売にかかる負担などで変わります。
例えば、歩合対象の店販売上が5万円なら、10%で5,000円、15%で7,500円。技術歩合とは分けて計算条件を決めましょう。
自社商品や利益率の高い商品だけ率を変える設計も考えられます。ただし、商品原価や値引き、返品を踏まえずに高い率を設定すると、利益が残りにくくなります。
5.業務委託の報酬は、雇用の給与と分けて見る
業務委託では「対象売上×報酬率」という契約を考えることもできます。ただし、雇用されるスタッフの給与とは仕組みが違うため、報酬率をそのまま比較しないことが大切です。
材料費、広告費、設備利用料などを誰が負担するかで、手元に残る額は変わります。社会保険や休暇などの条件も確認し、報酬率だけを正社員の歩合率と並べないようにしましょう。
契約に「業務委託」と書けば必ずその扱いになるわけでもありません。実際の指揮命令や働き方によって、労働者に当たるかの確認が必要です。
6.歩合給でも、最低賃金と残業代の確認は必要
雇用されるスタイリストは、歩合給でも最低賃金法の対象です。固定給と歩合給がある場合は、それぞれを適切に時間額へ換算して合算し、最低賃金と比較します。
また、歩合を払っているから残業代が不要、とはなりません。法定時間外労働などがあれば割増賃金の計算が必要です。固定給部分と歩合給部分では計算方法が異なるため、給与ソフトの設定も確認しましょう。
出来高払制の対象となる労働者には、労働基準法第27条による、労働時間に応じた一定額の保障も必要です。ただし、固定給が賃金総額の大半を占めるなど、同条の適用範囲には条件があります。求人上の「最低保証」という名称だけで判断しないことが大切です。
根拠:厚生労働省「歩合給制の概要・最低賃金・割増賃金」(労働基準法第27条・第37条、最低賃金法第4条等)
7.歩合率を決める前のチェックリスト
基本給と歩合給、最低保証給の関係は明確か
指名・フリー・店販のどの売上が対象か
売上全額か、基準額を超えた部分だけか
税込・税抜、値引き・返品、売上計上の時点をどう扱うか
売上区分ごとの率、上限、支払時期は明確か
最低賃金・残業代の計算と整合しているか
さらに、社会保険の会社負担、材料費、家賃、広告費、教育費も含め、サロンに必要な利益が残るかを試算しましょう。個人売上だけでなく、後輩の育成や店舗への貢献をどう評価するかも制度設計のポイントです。
スタッフが自分の給与を説明できるくらい、計算ルールを分かりやすくすること。求人票・雇用契約書・賃金規程・実際の給与計算をそろえると、認識のずれを防ぎやすくなります。
美容室の給与制度の相談はSHARO tokyoへ
SHARO tokyoは、美容業界と成長企業の支援に力を入れる社労士事務所です。労務相談、就業規則、給与計算、HRテックの活用などを通じて、サロン運営を支えています。
「今の歩合率で利益が残る?」「スタッフに分かりやすいルールにしたい」「最低賃金や残業代の設定が心配」というときは、売上と勤務時間、現在の給与制度を一緒に整理するところから始めましょう。
※本文の歩合率・給与額は、仕組みを説明するための仮の設定です。特定の会社の事例、全国平均、推奨率を示すものではありません。法律の適用は個別の状況により異なります。